小さな傷の意味するもの
私は子供と関わる仕事をしている。
子供は全身で様々なメッセージを大人に送ってくる。
ある女の子が、手の指の小さな見えないほどの傷を見せて、
「ここが痛い。」
あるときは、
「頭が痛い。」
あるときは、
「足が痛い・・。」
とにかく、全然大丈夫そうなのだけれど訴えてくる。
私はそのたびに訴えを聞き、絆創膏を貼ってあげたり、氷で冷やしてあげる。
たぶん、そんな必要のない程度のものだと承知の上で。
その女の子の本当の訴えは、
「私を気にかけて・・・。」だ。
親が忙しかったり、他に手のかかる兄弟がいたりすると、どうしてもしっかりしていて親に甘えていかない子供は後まわしになる。
・・・とはいっても、その女の子もまだまだ幼いのだ。
お母さんに甘えたいし、話も聞いてほしいし、自分に注目してほしいのだ。
その思いをたぶん、お母さんやお父さんに訴えているはずなのだが、親に余裕がなかったり、忙しすぎたりで十分に取り合ってもらえなかったのだろう。
それを、満たすために他の大人に訴える。
まだ訴えてくれるのだから、よかった・・・と思いながら私はその子の指にばんそうこうを巻く。
子供の訴えは、それが小さなとるに足りないことのように見えても、その奥には必ず意味がある・・・と思う。
だから、「あなたのことを私はちゃんと見ていますよ。」の意味を込めて、子供からの見えないメッセージに向き合うように心がけている。
いろんな行動で、愛や思いやりを欲しているのを表現している子供に気づいてほしいと思う。
そのうち、あきらめて訴えてこなくなる前に。
それは、親だけでなく子供の周りにいる大人の責任でもあると思うのだ。